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マダムの部屋 「世界のトラック」 私なりに万全な準備をしてきたつもりだった、世界選手権は、呆気なく12位。 これじゃ、オリンピックと同じじゃんか。と、情けなく思ったが、 大切な試合に照準を合わせられなかった現実は、今の自分の 実力と、受け入れ、精進するつもり。 いずれにしても、長くて短いシーズンが終わってしまった。 最終戦前の練習で、私が冒してしまった「けが」と、世界のトラックについて、海外遠征3年間でわかったことを記したい。 やってしまった!!ドイツ・アルテンベルグは、世界でも最難関と言われるトラックだ。 この難関コースに初挑戦(1本目)にして、大転倒だった。 ナガノにはないクライスル(一回転するカーブ)10カーブの出口で、 私は、飛んだ。見ていた海外の選手は、「EIKO FLY!!」と興奮気味に話していたそうだが、飛んだ瞬間は、頭が真っ白。そのまま、氷面に右半身をぶちつけ、2カーブくらい進んで止まったが、衝撃と痛みで起きられず、救急車で運ばれた。 ほかにもクライスルを持つトラックはあるが、ここのクライスルは、孤が、とにかく小さく、驚くほどGがかかる。大きく波を3、4回打ちながら進んでいく。私は入り口で失敗したこともあって、生まれて初めて感じた大きなGに、びっくり仰天。足をタイミング良くつきながら、カーブを出るしかないのだが、わけがわからなくなってしまい、飛んだらしい。 ここのトラックはほかにも転倒ポイントがいくつかあるように、きちんと操作を行えないと、危ない。大げさなくらいに強い操作をしつつも、力を抜いてそりを進めていくという、難しさ。ドイツの選手たちが、渾身の力を込めてイメージトレーニングをしているのもうなずける。 その前のスイス・サンモリッツのトラックは、アルテンベルグとは正反対だった。いかに小さな操作で、そりを走らせていくかというのが、勝敗の分かれ道だったように感じる。微妙な操作の「感覚」を何となくいい感じにつかめたサンモリッツでは、私は初めて5位に入賞できた。 その「感覚」で、アルテンベルグに乗り込んだことが大きな間違いだった。確かに微妙な操作で、1カーブから操作をしていたのだが、そりは、思った方向に進まなかった。スタート後から、そんな感じで慌てふためき、10カーブに入ってしまったのだから、身体はがちがち。冷静な判断どころじゃなくなってしまった。 世界のトラックをだいぶ回ったが、大概3種類に分けられるように感じている。 無操作に近いような微妙な操作が必要とされる今季のサンモリッツのようなトラック。きちんとある程度の強い操作をタイミングよくこなしていかなければならないアルテンベルグのようなトラック。その中間をいくナガノのようなトラック。すべてに違う要素があって、その特徴を察知し、操作を変えていけるようにならなくては、コンスタントにアベレージを残すことはできないということだ。 それぞれのトラックが持つ「呼吸」を読み、合わせていけるような技術と身体をつくること。 チャンピオンへの道は遠いなあ・・・ |
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